sgotoの日々是好日

茶道と共に歩み考える日々を綴ります

外国人留学生の茶道体験

「外国人留学生に茶道体験をしていただけないでしょうか」という突然の依頼メールが届いた。差出人は私が稽古場として利用している茶室の近所にある専門学校の先生である。私たちのグループが定期的にその茶室で稽古をしていることをインターネットで検索し…

不味い薄茶は誰のせい?

薄茶 お茶会で出てくるお茶というのは大抵の場合は美味しい。お家元お好みの高級抹茶をぜいたくに使った濃茶や薄茶を時候の風物を象った色とりどりのお菓子とともにいただくのは至福のひとときだ。 「大抵の場合は」と言ったのには理由がある。たまに「ハズ…

悩ましき茶筅荘

薄茶茶筅荘 私の習う茶道の流儀には茶筅荘(ちゃせんかざり)という点前がある。茶筅荘は「かざりもの」と呼ばれる四種類の点前(茶入荘、茶碗荘、茶杓荘、茶筅荘)の一つだ。 これらの点前は「目上の方から茶道具をいただいた」場合、これを当日の客にお披…

六十の壁

「和敬清寂」 「小1の壁」という言葉がある。共働きのご夫婦が子供が小学校にあがる際に直面する様々な問題のことだそうだ。なるほどうまいことを言うものだ。実は私も今とある壁に直面している。「六十の壁」だ。 このところ私と夫の教える稽古場に見学を申…

初めての東京初釜式

お土産にいただいたお扇子「招友供清茗」と書かれている まさか私が初釜式にお呼ばれする日が来るとは思わなかった。 初釜式は年頭の、そして流派最大の盛大なお茶会である。我が流派の場合は例年京都で6日間行われたのち、東京に場所を移して4日間開かれる…

お茶会の写真を撮る

雨に映える紅葉 令和四年寅年、何を隠そう私は還暦を迎えた。私より五日間だけ早く生まれた夫も当然ながら今年還暦を迎えている。仮にもお茶を嗜む者が二人そろって人生の節目を迎えるのであるから、これはお茶会をして祝うしかない。 幸いにも世の中の風向…

お茶会の楽しみ

ソバの花(記事内容とは関係ありません) 裏千家の青年部からお茶会のお招きを受けた。「ご招待」というハンコの押された茶券を受け取ったのは初めての経験だ。 以前にもこのブログに書いたけれど、青年部は裏千家の若い世代の親睦組織である。私がご指導し…

浴衣でお稽古

ミンサー織の半幅帯(浴衣用) 「浴衣でお稽古してもいいでしょうか?」 と尋ねてきたのは最近入門したばかりのAさんだった。「どうぞ」とお答えして以来、彼女は毎回誰よりも先に来て、更衣室で浴衣に着替えてはお茶の稽古に臨んでいる。浴衣が涼しげでとて…

終戦記念日の和敬点

2022年8月15日の日の出 8月15日の前後には自宅で和敬点の稽古ををすることにしている。 和敬点の和敬は「和敬静寂」から取られたことは容易に想像がつく。どれほど由緒のある点前なのかと思いきや、作られたのは昭和の時代だ。わが流派の点前としてはかなり…

折据の神様

折据と花月札 久しぶりに社中の皆さんと花月(かげつ)の稽古をすることにした。 花月(正式には「花月之式」という)はわが流派に伝わる集団稽古の一種である。江戸時代に華美な茶の湯を好む傾向を憂えた当時のお家元が精神面と技術面の両方を鍛えるために…

茶道を始める理由

その道に入らんと思う心こそ我が身ながらの師匠なりけれ(利休百首より) このところ私と夫が教えている茶道教室への入会者が増えている。 ひょっとして世の中茶道がブームなのだろうか?昭和のはじめ頃にはそんなブームがあったそうだが、令和の世ではあま…

日の丸と宗旦

日の丸むくげ(左)と宗旦むくげ(右) 茶室の床の間には茶花がつきものだ。が、この茶花というのがお茶の稽古をする者にとってはなかなか悩ましい。私が初めて茶花と向き合うことになったのはかれこれ二十年くらい前のことだろうか。 当時通っていた茶道教…

おいしい薄茶の法則

ある日の薄茶 近頃私は毎日家で薄茶を飲んでいる。 きっかけはコロナ禍でお茶の稽古ができない日々が続いたことだった。定期的にお稽古をしていれば薄茶を飲むチャンスはいくらでもある。以前はご近所のお茶の先生のところに遊びにいけば、ちょっと上等な濃…

二年半ぶりのお茶会

新緑の茶室 五月のとある日曜日の午後、私はお茶会に出かけた。 「お茶会」ってなんだか懐かしい響きだ。調べてみたら私が最後にお茶会に参加したのは2019年の12月に都内のお寺で開かれた茶筅供養茶会だった。約二年半の間お茶会というものから遠ざかってい…

新しい日々の始まり

新しい朝 何事にも「ご縁」というのはあるものだ ある朝、私が細々と開いている茶道教室のFacebook宛に見知らぬ方からメッセージが届いた。 ”突然のメッセージ失礼します。g.o.a.にブログを書かれていたs.goto様とお見受けしました。g.o.a.tのサービスが終了…

宗名って何ですか?

朝からいきなりLINEが来た。「先生、青年部のKさんから『今度の行事で先生のお名前を紹介するので宗名の読み方を教えてください』とメールが来たのですが、私の知識不足で宗名が何のことかわかりません。教えてください」というBさんからの連絡だった。 Bさ…

茶道のお礼状

お茶の稽古に行くと抹茶の点て方やいただき方を教えてくれる、というのが一般的な認識だと思うのだが、私にとっては日本の伝統的なマナー、交際における気遣いというのがどういうものかを知ることができた、というのが大変有り難かった。 たとえば、師匠が新…

各服点の謎

新型コロナウィルスの影響で全くお茶会がない。というより、もう春先からずーっとお茶会がない。世間ではやれGo to トラベルだGo to イートだと「新型コロナウイルスなんか気にせずに経済を回そう!」という掛け声が盛んだが、茶の湯の世界ではそう簡単には…

ドクダミとにおいの記憶

今年は春先から外出が難しい自粛の日々が続いたので、私もインスタグラムでお茶人さんを何人もフォローした。感染症予防のためには三密回避だというので茶会が開けない、それどころか茶室に集まって稽古もできない状況なので、せめて他人様の写真でも眺めて…

茶道の適齢期

稽古場の見学に来られた方から突然「三歳になる娘がいるのですが、いずれお茶を習わせたいと思っています。何歳から始められますか?」と質問された。意外な質問だったので一瞬答えに詰まったが「六歳からですね」と答えた。 何歳から稽古を始めることが可能…

「今宵の主」という花入

花入「今宵の主」 コロナ禍で稽古のできないお茶の先生方は今インスタグラムという写真がメインのSNSに集結している。先生方の投稿は茶室で一人稽古する写真であったり、本来ならこの春の茶会で披露されるはずだった道具の写真であったりと、なかなか勉強に…

相伝帛紗のこと

「相伝帛紗」と呼ばれる織のふくさ 裏千家十四代淡々斎(無限斎)の花押と「好」の文字の縫い取りのある帛紗。模様が立体的に浮き出している織物でできているが、古帛紗ではなく塩瀬の帛紗と同じサイズだ。 実は、この帛紗はある事情で昨年私の手元にやって…

和巾点と玄々斎の出自

和巾と中次 新型コロナウイルスの影響で今月はいつもの茶室が利用停止となり、稽古ができなかった。お茶のない生活というのは思いのほか私にとっては辛いものだったので、夫を相手に何度か家で稽古をした。 家には炉が切ってないので急造の置炉、炉釜も今家…

初めてのお茶会、引率編

初めてお茶会に行く。お茶を習っていれば誰もが通る道だ。私が初めてお茶会というものに出席したのはいつのことだっただろう?覚えていないところをみると、お茶会に客として行くよりも先に、師匠が主催する茶会でいきなりお点前デビューしたのが最初だった…

茶名を取るべきか否か

裏千家茶道には許状の他に資格というのがある。以前は許状だけだったが、最近は取得した許状に応じて「初級」「中級」「上級」「講師」「専任講師」などの資格が伴うようになった。これは履歴書などに記入する際、一般の人にもわかりやすくするために設けら…

その名は色紙点

色紙点用の御所籠 色紙点という点前がある。茶箱点前の一つに数えられてはいるが、他の五種類の点前とは大きな違いがある。使うのが「茶箱」ではなく、「御所籠」と呼ばれる籠なのだ。 御所籠には組紐(帯締めを一回り太く厚くしたような、先に房のついた紐…

茶箱点前の思い出

毎朝窓を開けるたびに少しずつセミの声が大きくなってきた。茶箱のシーズンの始まりである。 私の師匠は毎年梅雨が明けると茶箱の稽古をした。理由は「暑いから」だ。たしかに、真夏にお湯の煮えたつ釜の前に座ると汗が噴き出してくる。というよりダラダラと…

古帛紗とは何か

いろいろな古帛紗 古帛紗(こぶくさ)とは何か。そんなことを考える機会が訪れた。久しぶりに例の「あの点前」の稽古をしたせいである。そう、古帛紗を使い帛紗として用いる唯一の点前のことだ。ピンと来た方は、私と同じ流派である程度勉強を重ねておられる…

許状料の表書き

茶道には「許状」というものがある。ご存知ない方にはよく勘違いされがちなのだが、許状は「ここまでできるようになりました」という到達度を示す書類ではなく「この点前を習っても良いですよ」と文字通りお家元が「許可」を出してくださるという書類である…

茶会記とフイルム

部屋の整理をしていたら古い会記が出て来た。十五年ほど前に師匠が亭主になって催された茶会のもの。私は小躍りして喜んだ。なんというお宝だろう!私は舐めるように会記を読んだ。 会記が宝ものだと気づいたのは最近のことである。定期的に稽古をやるように…